具体例
これまで様々な自然保護関係の法律を見てきましたが、やたら多くて一度に把握しきれません。
そこで、具体的に代表的な自然探勝地の規制状況を調べてみることにしました。
★高尾山周辺の森林(東京都八王子市) (高尾山について詳しくは→高尾山公式ページ)
高尾山は東京都で最もポピュラーな山のひとつです。
新緑や紅葉シーズンをはじめ、休日はいつも登山客でにぎやかです(メインルート1号路から山頂にかけてはにぎやかすぎるくらいです)。
それは、京王線「高尾山口」駅を降りればすぐに登山口にアクセスでき、標高も600m程度という手軽さに加え、
信じられないほど植物相が豊かで、何度登っても飽きのこない魅力的な自然環境が残されているからと思います。
では、さっそく規制のようすを見てみることにします。まずは、国有林の範囲を調べてみました。
「高尾山」と書いてある周りがほとんど国有林なのが見てとれます(緑色の網目の範囲が国有林です)。
実際には、登山道に沿って歩くぶんには地主の許可を得る必要はありません。マナーを守って登山します。
しかし、植物を採取する際には、国有林の範囲内であれば森林管理署に、その他の民有林であれば地主に許可を申請します。
ついでに、上の図には保安林の範囲も示されています(緑色の点々が薄く表示されているのが保安林です)。
表高尾の森林が広範囲にわたって保安林に指定されているのがわかります。
保安林内では樹木の採取損傷、下草の採取が禁止されていますので、それらの行為をする場合は県に許可を申請します。
また、国有林保護林である「高尾山モミ植物群落保護林」があるそうです(図には示されていません)。これにも注意が必要です。
つぎに、自然公園の範囲を調べてみました。高尾山周辺は「明治の森高尾国定公園」に指定されています。
高尾山の周囲全域が国定公園に指定されています。青の横縞は「国定公園の特別地域」を意味します。
特別地域内では、木竹伐採と指定植物の採取損傷が禁止されています。それらの行為をする場合は環境省から許可を得る必要があります。
2007年現在、100種あまりが指定されているようです。以下に、2007年12月現在の、明治の森高尾国定公園の指定植物を列挙します。
スギラン、イワヒバ、ヒメウラジロ、シロヤマシダ、トヨグチイノデ、オオキヨズミシダ、クモノスシダ、ワダソウ、フクジュソウ、イチリンソウ、キクザキイチリンソウ、アズマイチゲ、
レンゲショウマ、カザグルマ、トウゴクサバノオ、オキナグサ、ヤマシャクヤク、ベニバナヤマシャクヤク、イカリソウ、ランヨウアオイ、カンアオイ、タカノカンアオイ、ハナネコノメ、
ウメバチソウ、イズノシマダイモンジソウ、コミヤマスミレ、ミシマサイコ、イワウチワ、ウメガサソウ、シャクジョウソウ、ギンリョウソウモドキ、ギンリョウソウ、マルバノイチヤクソウ、
イワナンテン、ミツバツツジ、レンゲツツジ、リンドウ、ホソバリンドウ、イナモリソウ、ムラサキ、カイジンドウ、アシタカジャコウソウ、シモバシラ、タカオホオズキ、タカオホロシ、
ヤマウツボ、ヒメトラノオ、イワタバコ、キヨスミウツボ、マツムシソウ、フクシマシャジン、ヤマホタルブクロ、ツルギキョウ、タニギキョウ、キキョウ、サワシロギク、テバコモミジガサ、
モリアザミ、ホソエノアザミ、ハコネヒヨドリ、マルバダケブキ、ミヤコアザミ、ヒメヒゴタイ、オンガタヒゴタイ、タカオヒゴタイ、セイタカトウヒレン、キクアザミ、コウリンカ、サワオグルマ、
シロバナショウジョウバカマ、イワギボウシ、ヤマユリ、コオニユリ、タカオワニグチソウ、ワニグチソウ、アマナ、ムギラン、エビネ、ギンラン、キンラン、ササバギンラン、ユウシュンラン、
サイハイラン、シュンラン、マヤラン、コアツモリ、クマガイソウ、セッコク、カキラン、オニノヤガラ、ミヤマウズラ、ミズトンボ、ムヨウラン、クモキリソウ、フウラン、サカネラン、
ヨウラクラン、オオバノトンボソウ、ベニカヤラン、カヤラン、クモラン、ヒトツボクロ、キバナノショウキラン。
つぎに、自然環境保全地域の範囲があるかどうか、調べてみました。
どうやら、高尾山周辺は自然環境保全地域(ピンク色の枠内)には指定されていないようです。
最後に、高尾山周辺の史跡名勝天然記念物を調べてみました。
私の調べる限り、国指定の文化財はなく、以下に示す都指定や市指定の天然記念物だけがあるようです。
「高尾山のスギ並木」(都指定)
「高尾山の飯盛杉」(都指定)
「高尾たこ杉」(市指定)
これらを許可無く傷つけたり、採取(どーやってするんじゃ!笑)してはいけません。
さて、おおかた調べ終わりました。まとめると、高尾山で植物採取の許可を得ようとすると、
国有林または民有林、保安林、自然公園(指定植物の場合)に関する許可を得る必要があることがわかりました。
身近な自然でも、意外に厚い法の網がかかっていることがわかります。
以上、自分がいつもやっているような感じで調べてみました。チェック漏れがあったらすいません、その旨メール頂ければ幸いです。
なお、このページの情報は私独自の調査例です。あくまで参考程度として、自己責任でお役立て下さい。
このページの範囲図3枚は、国土地理院土地利用調整総合支援ネットワークシステム「LUCKY」より引用したものです。